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【新連載:山崎元の男と女の婚活経済学 2】結婚とは「恋愛のバブル」だ

婚活 Pickup 山崎元の男と女の婚活経済学

「バブル」とは?

「恋愛がバブルに至ったものが結婚だ」というのが私の仮説だ。自分では、有力な仮説だと思っている。

「バブル」とは泡のことだ。膨らんだ泡は、やがて消える。経済の世界では、「株価や地価などの資産価格が、長期的には維持できないくらい高過ぎる状態が形成される現象」を指す。

有名な例としては、17世紀のオランダでチューリップの球根に対する投機熱が行き過ぎて「チューリップ・バブル」が形成されたことや、1929年の大暴落からその後の大恐慌につながったアメリカの株価のバブル、また、最近では、2008年のリーマンショックから世界経済危機と呼ばれるに至った状況を生み出した主にアメリカの不動産価格のバブルなどが有名だ。

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バブルの大きさを誇っても仕方がないのだが、日本にも世界史に誇ることが出来るような大型のバブルがあった。1980年代の後半に入って株価と地価が急上昇し、1989年末には、株価が日経平均で3万8915円の高値を付けるに至った大規模なバブルがあった。

バブルは俄に多数のお金持ちを生み、世の中の景気も良くなるので、多くの人々が浮かれた気分になる。1980年代末から1990年代初頭に青春時代を過ごした人は、俗に「バブル世代」などと呼ばれるが、当時の消費習慣が残っていて、派手好きな傾向がある。彼らから見ると、今の20代、30代の人々は、「堅実なのは分かるけど、ずいぶん地味だ」と映るようだ。

他方、バブルの頃の求人が多い時期に入社した人々は「バブル入社世代」と呼ばれ、大量採用の甘い基準で入社した「使えない(仕事が出来ない)世代だ」というありがたくない評判も持っている。

バブルは、それだけで経済学の研究テーマになるような現象だが、バブルが崩壊すると、資産価格の下落によって、不良債権問題が起こり、不景気な状態がやって来るのが常だ。従って、経済政策の観点からは、できればバブルを起こしたくない訳なのだが、繰り返し起こっているのが現実だ。

結婚が「バブル」である理由

さて、恋愛には、相手を勝手に理想化する時期がある。うろ覚えの記憶で恐縮だが、スタンダールが「恋愛論」で「結晶作用」と呼んだ現象だ。

男性側の典型的な恋愛心理の推移プロセスは次のようなものだ。
(1) 特定の女性に対して何か好ましい特徴を見つけて関心を持つ、
(2) ドキドキしながら付き合い始める、
(3) 相手の女性の様々な特徴を好ましいものとして解釈する、
(4) 相手を唯一無二の「理想の女性」だと思う、
(5) (しばらく付き合うと、或いは、一緒に生活すると…)、
(6) やがて、相手の欠点も見えてくるようになる、

筆者は、残念ながら女性側の心理が分からないが、男性の方が女性よりも「熱しやすく、冷めやすい」傾向があって、女性の方が「緩やかに熱して、緩やかに冷める」ように思うが、似たようなプロセスを辿っているのではないかと想像する。

そして、このプロセスの(3)〜(4)が進行しつつある時に、相手の女性を何としても自分のものとして「確保」しようと思った時に切るカードが、「結婚しよう!」という、いわゆるプロポーズだ。

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恋愛が昂じる以前の平時の男性は、付き合う女性を求めながらも、自分の自由を束縛されたくないと考えているのが普通だ。そして、通常の独身者は、結婚は人生で一回だけするものだと考えている。そこで、時々の恋愛相手に対して「この相手は、自分に取って、一生添い遂げるにふさわしい相手か」という自問をしながら、異性と付き合っていて、なかなか結婚に至らない場合がある。

しかし、自分の前に新鮮な相手が現れて、恋愛のプロセスが(3)から(4)に進んだ時に、「彼女は、自分に取って理想の相手にちがいないから、何としても彼女を確保したい!」と思って、プロポーズに至るのだ。特に、ライバルの存在が顕在化した場合などは、こうした気持ちになりやすい。

結婚は人生のゴールでは全くないが、結婚を一つのゴールとして、女性の側から眺めた場合、相手の男性が(3)〜(4)に至った時期に、「別れるか、結婚するか」という選択肢を相手に突きつけることができる展開が最も結婚しやすい。

長々と付き合って、お互いのいろいろな面が見えて来ると、結婚の相手は別の相手でもあり得るし、現在の相手がいいか、将来付き合う相手の方がいいかは、現時点ではなかなか決めがたいという、ある意味で当たり前の状況を理解するようになる。こうした心理が、「長すぎた春」を生む。

物事を「決める」には、適切なタイミングというものがある。

恋愛バブルの賞味期限は「4年」?

さて、理想は、現実と異なるから理想と呼ばれている。

理想化が有効に機能している期間に結婚に至ったカップルにも、やがて、相手が理想的なだけの存在ではないことに気づく「現実の時間」が訪れる。

ちょうど、投資家が理想的な将来像を見て高値まで買い上げたバブルの株価が、会社の現実が見えて来ることに伴って下落するように、恋愛の状況が変わっていくのだ。

世間を観察するに、成功した結婚は、「恋愛のバブル」を切っ掛けにして始まって、これを、恋愛の余韻を残しつつ、「生活の現実」に上手く着地できた結婚であるように思う。

それでは、「恋愛のバブル」は永続しないのだとしても、さて、どれくらい続くものなのだろうか。理由は何れ本連載で書いてみたいと思うが、筆者は「4年」くらいだと推定している。読者の実感はどれくらいだろうか。「永遠」ではないはずだ。

尚、筆者は、結婚は恋愛のバブルの産物だと思っているが、「バブルのない人生は、つまらない!」と思っていることを付け加えておく。


著者プロフィール

山崎 元

(やまざき はじめ)

1958年、北海道生まれ。
東京大学経済学部卒業。現在、楽天証券経済研究所客員研究員。 現在は、コンサルタントとして資産運用分野を専門に手掛けるほか、経済解説や資産運用を中心に、メディア出演、執筆、講演、各種委員会委員等を務める。


山崎元の男と女の婚活経済学コラム | バックナンバー
1.「経済力」は、「結婚しない理由」にはならない
2. 結婚とは「恋愛のバブル」だ