【連載:オトナ漫画の原作者が本音を吐露、日常に潜むちょっとエロスなエトセトラ】~コーヒー編~

いつか大人になれば、コーヒー片手に電話機を肩で挟み、億単位の仕事を口頭で指示しつつ、傍らには金髪の恋人…。そのような世界に身を置くのだと信じていましたが、未だ叶わず今に至ります。コーヒーは苦く香る大人の象徴。つまりそこにはエロスが潜んでいるのです。今回は、コーヒーに潜むエロスをご紹介したいと思います。

エスプレッソ

ホンネスト

「エスプレッソダブルで」。コーヒーの知識が全く無かった思春期の頃、語感に惹かれて注文し、目の前に差し出された少量の真っ黒な液体。ドリンクとは喉を潤すためのものだと信じて疑わなかった私が受けた衝撃は計り知れません。芳しい香りを放つのにとても苦くて薬のようで、それはまるで、もてあそばれていると知りつつも年上の男性に恋をして、結局火傷した後の傷跡に似た感覚。消えない傷跡であればあるほど、愛おしい。人はみな、一度は語感に惹かれて「エスプレッソダブル」を頼んでしまうのでしょう。エスプレッソダブルがこの世に存在する限り。

アメリカン

ホンネスト

浅煎りの薄味。ざっくり大味アメリカンをひとたび口に含めばそこはブロードウェイ。アメリカンドリームを夢見る青い目をしたプレイボーイと恋に落ち、情熱的で官能的なメジャー級のパワープレイに骨抜きになるのです。そして、身も心も全て捧げた挙句、いとも簡単にすてられる…。彼が与えてくれた濃密で濃厚な快楽を忘れられない私は、タイトなホットパンツに熱い身体をねじ込んで、夜の街へと消えてゆく…。「アメリカン」と言葉にする度にそんな切ない光と影の物語が私の脳内で繰り広げられるのです。

アイスコーヒー

ホンネスト

コーヒーはホットで香を楽しむものだ! という意見に真っ向から挑戦状を叩きつける強気なコーヒー。熱々のコーヒーに、キンキンに冷えた氷を豪快にぶち込んで、じわじわと熱を奪われて我慢できなくなったコップが水を滴らせながら冷やしていく様を見つめていると、私はそれに反比例するように体が熱くなってゆくのです。ちなみに、水出しコーヒーは「ダッチコーヒー」と呼ぶそうです。まさにエロスの申し子と呼ぶにふさわしいコーヒーです。

芳しい香りのコーヒーは奥が深く、まだまだ私はコーヒーからエロスを感じ取る技術はひよっ子レベルと言えるでしょう。心をリラックスさせて官能の世界へ誘ってくれるコーヒー。コーヒーが持つエロスパワーは底知れぬものなのかもしれません。