【ネット婚活】【新連載:山崎元の男と女の婚活経済学 7】夫婦の危機を招く「育児認識ギャップ」問題

夫婦のすれちがいは何時から起こる?

本連載では、概ね「結婚は悪くないものなので、相手がいたら、やってみるといいよ!」というトーンの話を書いてきた。これは、筆者の本音であって、連載の趣旨を忖度(そんたく)して歪めた意見ではない。

 しかし、例えば、投資の勧誘にあって、投資のリスク面についても話をすることが重要であるのと同様に、結婚生活が上手く行かなくなるリスク要因についても情報を提供することが、良心的でもあり、必要なことでもある。

もちろん、夫婦の間が上手く行かなくなる原因は夫婦によって様々だし、問題が起こらなかったり、問題が起きても乗り越えたりする夫婦もある訳だが、本稿では、結婚生活に問題を引き起こす典型的な原因の一つをご紹介して、これから結婚を考える読者の検討材料としたい。

問題にぴったりした名前を付けることは難しいが、敢えて名付けるなら、夫婦の間に起こる「育児認識ギャップ」が大きな問題なのだ。

子供を持つことは「幸せ」か?

結婚して、しばらくすると、多くの夫婦に子供が生まれる。また、ざっと結婚の少なからぬ割合が「デキ婚」と呼ばれるような、第一子の妊娠後に決まる結婚であることもあって、夫婦が子供を持つケースは少なくない。

実は、そこから2年くらいの時期が大変危険なのだ。

おしなべて言うと、子供を持つこと自体は、夫婦の両方にとって「幸せ」なこととして理解される。親戚・友人など周囲も祝福する。ここまではいいのだが、単に喜んでいる夫の側と、出産・育児の現実に直面する妻の側とで、認識に大きなギャップが生じやすいのがこの時期なのだ。そして、その時期に生じた認識のズレは、将来の不仲や、ひいては離婚につながりかねない。

ともかく、夫の側では、子供が生まれて嬉しいのが普通だし、夫は妻もまた自分と同様に幸せを感じているのだろうと推測しがちだ。

これでいけないのだろうか?

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育児認識ギャップの実体とは

一方、妻の側では、先ず出産の肉体的なダメージから回復するのに時間が掛かるし、主に母親が面倒を見る新生児期の子供は、容赦なく母親の睡眠時間を縮め、頻繁に手間と心配を掛けさせて、大きなストレスの原因となる。

また、ホルモンのバランスなどに原因があるらしいのだが、この時期の妻は、男性としての夫に対して冷淡な態度になりがちだ。

そこで、妻にかつてほど構って貰えなくなった夫の側では、「妻も子供が生まれて幸せなのだろうし、彼女が子供に集中するのはいいことだし、自分に関心が薄れるのは仕方がない」と自分を納得させることになる。

ここで夫が、妻のストレスに気が付いて、家事・育児を手伝うなり、ストレス解消の手伝いをするなりすればいいのだが、夫の側では、「妻も幸せで、自分は妻を幸せにしているのだ」と勝手に納得して、「それでは、自分は仕事に集中しよう」と思ったり、家庭内で構われない自分の精神的な埋め合わせを、外の交友関係などに求めたりすることになりがちだ。

中には、自分は妻と子供を愛しているのだからいいのだ、と勝手に納得して、浮気に走る夫もいる(世間的には最も「ゲスだ!」と分類される浮気だろう)。

夫が浮気に走って、それが露見するというほど事態が悲惨でないまでも、「益々マイペースになって、のほほんと幸せを疑わない夫」と「日々育児のストレスに苛まれて、手伝ったり同情を向けたりしない夫に恨みを募らせる妻」という状態が少なからず継続する。

夫の側の状態を一言でいうなら、「油断している」のだ。

一方、妻の側では、この時期に夫の人格に対して幻滅して、「恋愛プレミアム」(恋することによる相手への過大評価)がすっかり剥げてしまったり、将来も消えずに何度も思い返すような「恨み」を蓄えたりしているのだ。

そして、過去に恨みの種があると、将来新しい恨みが生じた時に、過去の恨みは複利の資産運用のように膨張して行くことが多い。「育児認識ギャップ」は、恨みの複利運用の元本になりやすい。

夫の側では、夫婦の不和、離婚の危機まで、意外に近い距離に居ることを知らねばならない。つまり危機感を持たなければならない。

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共働きか、専業主婦か

妻の第一子出産は、共働きの場合と専業主婦の場合とで、影響の仕方が異なる。経済的に危ないのは共働きの場合であり、心理的に危ないのは専業主婦の場合だ。

第一子出産を機に、いったん勤めを辞めてしまう女性が少なくないのだが、共働きの家計と、片働きの家計では、当面の経済的な豊かさも、将来のリスクに対する対応力も大きく異なる。

経済的な現実を考えると、「専業主婦は贅沢品」なのだが、出産・育児の疲労やダメージ、ストレスの強さなどから、「もう働いてなど、いられない」とばかりに、共働きから専業主婦に路線を切り替える妻が少なくないのだが、夫の収入だけで、子供の教育費を賄い、更に老後の生活に対する備えが出来るのかどうかは、十分に検討してみる必要がある。

それに、個人としての立場を考えた場合、自分で働いて稼ぐ手段がないという状態は、不安定で脆弱だ。

全てのケースでそうだと迄は言わないが、何とか踏み止まって、仕事を辞めない方がいい場合が多い。

一方、妻が専業主婦である場合、夫の側は自分が妻を養っているという意識を強く持ちがちで、この意識が夫の「マイペース」に拍車を掛けることになると、必然的に夫婦の亀裂が大きくなる。

外で稼ぐのは全て自分だから、専業主婦という贅沢な身の上にある妻が家事・育児に全て責任を持って当然だと夫は考える。この考えの妥当性は、個々の夫婦の理解によるので、一概に何とも言えないが、無条件にこの思想に染まっている夫は「危ない」。

育児の負担について結婚前に話し合え

育児に対する夫婦の認識ギャップの問題を解決するには、結婚前に、子供を持つか持たないか、子供を持つ場合にどのように生活するかについて、二人で話し合いをしておくのがいいだろう。契約書を交わさないまでも、二人の間で了解事項を確認してから、結婚に踏み切るべきだ。

想像するに、結婚を前にした話し合いは、たぶん女性の側にとって有利な内容に落ち着くだろう。男性は、相手の女性を「確保」したいと思っているだろうし、自分では子供を産めないので、将来の妻に対して、調子のいい協力的な約束手形を切る場合が多いのではないだろうか。

実際に、子供を持つか持たないか、持つとして何時持とうとするかは、二人の人生に大いに影響するので、正面から考えておくべきだ。結婚も子供も含めて、人生には計画通りに行かない場合が多々あるが、それは、将来について考えることが、無駄であることを意味しない。

著者プロフィール

山崎 元

(やまざき はじめ)

1958年、北海道生まれ。
東京大学経済学部卒業。現在、楽天証券経済研究所客員研究員。 現在は、コンサルタントとして資産運用分野を専門に手掛けるほか、経済解説や資産運用を中心に、メディア出演、執筆、講演、各種委員会委員等を務める。

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