【ネット婚活】【新連載:山崎元の男と女の婚活経済学 11】離婚も出来るから、結婚できる

「永遠」の呪縛を解け

結婚を祝う楽曲を一曲選べと言われたら、筆者は、たぶん安室奈美恵さんの「CAN YOU CELEBRATE?」を選ぶ。引退を発表して大いに話題を集めているあの安室奈美恵さんの初期の代表曲の一つだ。彼女の結婚の発表と、この曲のイメージは今も鮮明に脳裏にある。

ところで、この曲の歌詞で何とも印象的なのは、「永遠ていう言葉なんて知らなかったよね」という部分だ。

結婚は「恋愛のバブル」だという仮説を本連載では何度も唱えているが、長く続いてもたかだか数十年の結婚生活の継続に「永遠」という言葉をあてようとするイメージにこそ、結婚が過大評価されたバブルであることがよく表れているのではないだろうか。

しかし、永遠を、「生涯添い遂げる」というくらいに現実に近づけてダウングレードして考えるとしても、結婚を「永遠に」続くものだと考えるとするなら、結婚に踏み切ることができないカップルが急増するのではないだろうか。

現実には、大凡、結婚した三組に一組が離婚する。残念なことかも知れないが、それは仕方のないことであり、離婚する時点で考えるなら、やり直しが出来るのだから当人達にとっていいことなのではないか。

判断力が不完全で、気も変わりやすい人間という生き物は、「永遠」を意識して決められることなど無いと考えておくのが現実的だ。恋愛バブルにあるカップルは、「永遠」の呪縛を解いて、気楽に結婚するのがよろしい。

離婚と転職

「三組に一組が離婚」と聞いた時に、思い当たるのは、就職や転職のことだ。新卒就職者の3割程度が3年以内に会社を辞めることを、しばしば企業人は嘆くのであるが、就職は、或いは転職も、ざっと3回に1回くらいは失敗するものだと考えていいのではないか。

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考えてみると、学生はそれを「一生の選択」だと思い、会社が漠然と「終身雇用」であることを期待して就職に臨むことが多いように思うのだが、この辺りの勘違いは、スケールこそ少し小さいかも知れないが、結婚を永遠と思う新婚カップルの勘違い振りによく似ているのではないだろうか。

筆者は過去に何度も転職している。最初に大手総合商社に入社する時は、「10年くらい働いてみて、面白いようだったら続けてこの会社で働こう」と思っていたのだが、思うところがあって4年で辞めて、投資信託運用会社に転職した。

その後、金融関係を中心に12回の転職を経験しているのだが、事後的に「失敗だった」と自己評価するような転職が、4回ある。順に、こちら側から見て、「職場のレベルと人間関係がまずかった」、「わざわざ移る意味がなかった」、「入った会社が思ったよりも早く破綻した」、「仕事が入社前の想定と異なり暇でつまらなかった」といった理由で「失敗」だったと認識している。奇しくも、3回の転職のうち1回の比率で失敗している。

かつての筆者がより慎重であれば避けられた失敗もあるのだろうが、これらの失敗を避けられるくらい常に慎重だったら、「成功」或いは「転職して良かった」と評価できる転職の幾つかが出来なかっただろう。経済的にどちらが得だったかはよく分からないが、「失敗した場合は、また転職すればいい」と割り切って転職を重ねたことは、全体としてそう悪くなかったように思っている。

筆者は、「転職の最適回数は何回くらいですか?」と質問された時に、「あなたの場合、あと2回です」と答えることにしている。失敗しないように上手く転職を進めるよう努力すべきだが、失敗した場合には、もう1回転職できることを覚えて置いて、転職のチャンスに対してどん欲になるといいというのが答えの意図だ。

新卒の就職ではなおさらそうだろうが、転職の場合も、転職先を実際の働き心地まで含めて完全に評価することはほぼ不可能だ。「失敗したら、また転職すればいい」という覚悟なしに転職することは無謀だし、現状の職場が「失敗」であることがはっきりしているのにそこに留まっているのは愚図で愚かだ。

一方、転職者にとって朗報は、転職は一回やるとそれに対して慣れと自信が持てるようになることだ。一般に、一回目の転職は不安なもので、決断を躊躇することが少なくないのだが、一度転職して、転職先で働いて生活してみると、「まあまあ、何とかなるものだ」という実感を持つようになる。即ち、自信が生まれるのだ。

「離婚」が「転職」ほどに気楽で簡単なものでないことは承知している。多くの離婚経験者は、離婚には結婚の何倍ものエネルギーが要ると言う。

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しかし、「失敗したら、転職できる」という気持ちを持って就職や転職を決めることが現実的であるように、「結婚」も「失敗したら、離婚という選択肢がある」との覚悟を持って行うといいのではないだろうか。

バツイチの相手はなかなか悪くない

何らかの不都合があって離婚した場合、その人は、世間では「バツイチ」と呼ばれる。但し、結婚の失敗を1回経験しているというほどの意味で、それほど重い言葉ではないので、「私はバツイチです」と積極的に自称する人が少なくない。

筆者の人生経験に照らすと、男性・女性の別を問わず、バツイチの人は、結婚に過剰な期待がないし、人間関係は難しいものだということを良く知っているので、付き合う上で悪くない人が多いように思う。バツイチであることによって、人間の評価を下げる必要は全くない。

もちろん、上手く行っている夫婦が離婚する必要は少しもない。ただ、上手く行くのか行かないのかが分からない将来について悩み抜いて、せっかく訪れた「恋愛のバブル」を「結婚」で仕上げないのだとすると、人生経験上も少々勿体ないのではないかと筆者は思うのである。

冒頭に挙げた、安室奈美恵さんの結婚が「永遠」でなかったことは、読者もよくご存知だろう。しかし、彼女は、大いに人生を謳歌しているように見える。離婚を恐れず、むしろ離婚もできることを気楽だと思って、カップルの皆さんは積極的に結婚してみて欲しい。

著者プロフィール

山崎 元

(やまざき はじめ)

1958年、北海道生まれ。
東京大学経済学部卒業。現在、楽天証券経済研究所客員研究員。 現在は、コンサルタントとして資産運用分野を専門に手掛けるほか、経済解説や資産運用を中心に、メディア出演、執筆、講演、各種委員会委員等を務める。

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